『量子コンピュータ上の宇宙でのシミュレーションは、宇宙そのものと区別がつかないのだ。』
『観測からでは量子コンピュータと見分けがつかないのだから、宇宙はまさに量子コンピュータなのである。』
~セス・ロイド
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ところで、「情報処理革命」と聞いて皆さんは何を思い浮かべますか?
<コンピュータの発明>でしょうか、それとも<インターネットの登場>でしょうか。
ロイドならこういうでしょう。
「それも情報処理革命だけど、この宇宙ではそれ以前にたくさんの"情報処理革命"が起きてきたんだ。例えば"生命の誕生"なんかも情報処理革命なんだよ。」
…この宇宙が巨大な情報処理装置だとするなら、その歴史は"情報処理手法の進化"という視点でも捉えられます。
では、"コンピュータとしての宇宙"の歴史について、順を追ってみていきましょう。
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最初の"革命"は、<宇宙の始まり>でした。
つまり、宇宙というコンピュータが"量子"を使って計算を始めた瞬間です。
宇宙は恒星や銀河を生みだしながらものすごい勢いで広がり、星々の中の原子を使って計算を進めていきます。
はじめは単純だった宇宙も、計算を進めるに従って重い元素を生みだし、星が死に、また生まれ、世界(=量子コンピュータの中のデータ)は次第に複雑さを増していきました。
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次の"情報処理革命"は、<生命の誕生>でした。
宇宙は誕生からおよそ100億年ほどかけて、生命を生みだしました。
生命は"遺伝子"を持ち、遺伝子は自分を複製するという特別な性質を持つ分子でした。
遺伝子の複製の仕組み<生命>は、遺伝子内部の情報によって性質が決まり、環境が生命にかける圧力(淘汰圧)によって、より生き残りやすい生命を生み出す遺伝子が生き残っていきました。
この時点では、生命の多様性は、時々起きるコピーの"失敗"によって生み出されるわずかなものだったと想像できます。
このときから宇宙は遺伝子という、原子や単純な分子より大きな情報の塊を使って、情報を処理し始めます。
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生命の誕生に続く情報処理革命である<性の誕生>は、宇宙の情報処理を劇的に効率化をしました。
何しろ、
「一世代ごとに少しずつ違う遺伝子の組み合わせを生みだす仕組み」
「遺伝子の多様性を爆発的に増加させ、環境の変化に強くする仕組み」
が同時にもたらされたのですから。
有性生殖による遺伝子の増殖は、遺伝子の完全なコピーを残すことはできませんが、世界中のいたるところで少しずつ性質の違うコピーを作り、生き残りにおいて単性生殖より遥かに有利でした。
余談ですが、ロイドはこの革命をこんな風に表現しています。
『性は楽しいだけでなく工学的方法としても優れているのである。』
…ロイド先生、なかなかの色男なのかもしれないですね?(笑)
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<生命>と<性>は、"計算する宇宙の歴史"という観点から見ても、革命的なことでした。
ロイドによれば、『生物が行っている遺伝的情報処理をすべて足し合わせると、人間が作ったコンピュータの情報処理量をはるかに上回り、しばらくの間は覆されることはない』というから驚きです。
しかし、こんな風に思う人もいるかもしれません。
「コンピュータは意味のある仕事をしているけど、"遺伝情報の情報処理"って何か意味があるの?」
・・・それは、人間はなぜ生まれてきたの? それに何に意味があるの? という意味とも取れますね。
この問いへの答えは、このシリーズの最後で一緒に考えましょう。
さて、ここで突然問題です!
次に宇宙で起きた"情報処理革命"は、何だったと思いますか?(^^)
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(つづく)
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参考文献
宇宙をプログラムする宇宙
セス・ロイド著
早川書房
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