2009年10月24日土曜日

哲学する科学:宇宙の"情報処理革命"史 その2

クイズの回答を送ってくださった皆様、ありがとうございました。

みなさん結構ちゃんと読んでくれているのだな、と身が引き締まる思いでした。

また、予想外の回答もあって逆に私が楽しませていただいたりもしました。


さて、私の方で用意していた正解は、<脳の誕生>でした。

しかしそう回答された方はいなかったので、代わりにその次の革命である<言語の誕生>と答えてくれた方を正解とさせていただきたいと思います。

実はロイドは「脳と中枢神経系の発達」を革命の一つとして挙げてはいますが、その前後の革命である性の誕生と言語の誕生をより重要なものとして位置付けているようでした。

なので、言語の誕生、ほぼ正解です!

さて、<言語の誕生>と回答された方はお二方いらっしゃいましたので、抽選が必要となりました。その方法ですが・・・

「私」と時計を使った乱数発生機が提示した数(「私」が「そうしようと思った」瞬間に時計を見た時の秒針の位置)を2で割った余りと正解者の方の応募順を比較して、一致した方を正解者にするという抽選、という方法をとらせていただきました。その結果・・・


プレゼント当選者は、M.Tさんとなりました。おめでとうございます!!


ちなみに他には、「文明」「文化」「思考」の誕生という回答も頂きました。

実は、私個人としては言語は思考や概念を伝達するための道具であり、文化・文明を表現する一つの手段と捉えていて、またこれらは全て<ミームの誕生>とも言い換えられると思っています。なので、全部まとめて正解としたいくらいでした。

「死」という回答もいただきました。

死は生命の誕生と同時に生まれたと私は理解していますが、情報という観点からすると、絶えず変化しながら受け継がれていく情報は、常に生まれては死んでいくものだとも言えるし、ある意味で不死性を持っているものだとも考えます。


(私の無意識の)思いつきで企画したクイズでしたが、いろいろ発見もあり、予想外の収穫がありました。

皆様、本当にありがとうございました!


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さて、性の誕生の次に起きた"情報処理革命"は、<脳の誕生>でした。


このメルマガでも以前取り上げましたが、脳とはある種のコンピュータだという考え方があります。

つまり<脳>の誕生は、宇宙というコンピュータの中に、別のコンピュータが生まれた歴史的瞬間だった!とも言えると思います。

その脳は遺伝子を使った計算が進むにつれて高度化して行きます。

そして現在、地球上で一番高度な脳は、(イルカだとする説もありますが ^^)たぶん人間の脳ではないかと思います。


その人の脳の能力を土台にして起きた次の情報処理革命が<言語の誕生>です。

言語によって、脳と脳が複雑な概念を伝え合い、協調して情報を処理することが可能となりました。

これは人間が作ったIT技術でいえば、インターネットの誕生と似ています。

ネットにつながる前、パソコンを使って買い物できるなんて、思いもよりませんでした。

コンピュータ同士がネットで繋がることにより、世界中のコンピュータが一つのコンピュータのように、情報や計算を分担し、今までできなかったことができるようになったのです。


それと同様にヒトの<脳>も、<言語>によって繋がることで、より高度な活動を行いはじめました。


ロイドはこう表現しています。

『言語のおかげで人々は広く分散させた形で情報を処理できるようになった。(中略)人々は新たな形で協力し合い、集団、群衆、社会、組合、(中略)民主制、共産制、資本制、宗教、科学… といったさまざまな形の分散情報処理が、独自の生命を獲得し、増殖して時とともに進化していった。』


・・・このメルマガを以前から読んでいただいている方は、「なにやらどこかで聞いた話と重なる部分があるな…」と感じるのでは?

そうです。少し前に"ミーム編"でお話しした<ミーム>とみなせる様々なものたちが、セスの話の中では「言語の登場によって生まれ、進化していったものたち」として取り上げられています。


"ミーム"論と"計算する宇宙"論の相関についてはまだ私の中で"計算中"なので、別の機会にお話したいと思います。

(つづく)


参考文献

宇宙をプログラムする宇宙
セス・ロイド著
早川書房

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